【インターンによる発信 『若い声』】 投票のすすめ

2019年12月19日 16:40 | 若い声

私はインターンのR・S。約9ヶ月間の交換留学を終え、今夏イギリスから帰国した。イギリスでは今月総選挙で保守党が勝利し、EU離脱に向けて再びジョンソン政権が動き出している。私が留学していた当時は、メイ首相の下で離脱の合意案が再三否決されるなど、議会は混沌としていた。留学先のイギリス北部の都市・エディンバラから週末にロンドンを訪れた際にはEU離脱賛成派によるデモ活動に遭遇したが、警察までもが出動し物々しい雰囲気となっていた。このような、イギリス政治における転換期ともいえる時期に留学できたことは、政治のダイナミズムを感じるという意味においても、とても有意義であったと考えている。


イギリスで感じられたのが市民レベルでの政治参加の機会が多いことである。そこでは、EU離脱賛成派・反対派の双方によるデモ活動が盛んであった。また、ネット上で署名を一万以上集めると、議会はそれに対して返答しなければならないという義務が課せられているため、ネット上での請願活動も盛んだ。実際に2度目の国民投票の実施を求める請願は何万もの署名を集め、議会で度々議論されてきた。留学中、大学の友人と政治に関する会話をする機会も大変多かった。皆、それぞれ意見を持っており、私自身も友人と言い合いになってしまった経験がある。日本であまりこのような光景が見られないことの背景には、日本人の本音をなかなか言えない性格や、他人に迷惑をかけないように配慮するという気質があるのだろう。


しかし、私は常日頃から社会問題に興味を持ち、当事者意識を持つことが重要であると考える。私自身が政治への関心を持つようになったのは高校生の時だが、実際に友人と政治に関する会話を交わす機会は、ほぼなかった。そんな中、一度だけクラス全体で政治の話でもちきりになった時期があった。トランプ氏が米国大統領に選出された時だ。その時のクラス全体での驚愕を今でも忘れることができない。と同時に、皆が皆政治や社会的な情勢への関心を持っていないわけではないということが証明されたと感じた。政治への無関心が問題点として取り上げられているが、必ずしも興味がないわけではないということではないか。


他方で、若者の投票率が低いことは事実である。確かに、日本人の性格からすると、デモ活動に参加することや日常会話で政治の話をすることのハードルは高いかもしれない。しかし、選挙で投票に行くことは簡単にできる。地元を離れて一人暮らししている大学生は、住民票を移していないことから投票案内が届かず投票に行かないというケースも多い。不在者投票へのさらなる呼びかけや、手順の説明が必要だろう。


また、どこの政党にも共感できず、どの政党に投票すれば良いのかわからないという声もある。確かに、自らの政治的イデオロギーに全て一致するような政党を見つけることは至難の業である。しかし、少しでも自らの考えに近い政党に投票することはできる。最近では、いくつかの質問に答えることで個人の考えに最も近い政党を紹介してくれるウェブサイトも存在する。そのようなサイトを活用し、投票することのハードルを下げることができれば投票率は上がるのではないか。


「私の一票だけでは何も変わらないから...」という声もある。しかし、イギリスのEU離脱を決めた国民投票は僅差での勝利で決定した。地方選挙では限界投票など、一票によって当落が決定する事例も実際に存在する。一票の重さは、私がインターンシップを通じて参加させていただいた選挙運動中にも痛感させられたことである。投票率を上げることによってより多くの人の民意を反映し、政治もそれに応えていくことが重要なのではないか。EU離脱に揺れ動くイギリスで一年間過ごし、国民一人一人の政治参加の意識の重要性を再確認した。(インターンR・S)


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(写真出典:https://www.europarl.europa.eu/news/en/press-room/20180424IPR02423/brexit-eu-and-uk-citizens-rights-remain-ep-s-key-priority)

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