『がんばろう、日本!』ロングインタビュー(その2.)~全4回~

2010年12月 3日 14:52 | その他

【民主党政権の政策を対象外にするなら、事業仕分けは単なるパフォーマンス】

 民主党はわれわれがやっているのを見て、事業仕分けを始めました。当時河野太郎さんと構想日本が作った事業シートも、そのまま使っています。構想日本からそのことを打診されたときに、われわれも了解しました。与党になって、それを政権の目玉政策として行っていること自体は、別に悪いことだとは思いません。これまでそういう機能(予算を削減する機能)がなさすぎたことが問題ですから、大いにやればいいと思います。

 自民党のなかには、事業仕分けについて「パフォーマンスだ」とか「法的根拠が不明」というような否定的な意見もありますが、私は前向きにとらえるべきだろうと思っています。ただそうは言っても、事業仕分けはまだ発展途上にありますから、これからどう深化させていくかという課題はあります。

 ここまでで第一弾、第二弾、第三弾の前半までが行われていますが、結構われわれがやったものをトレースしているところもあるんです。それは構わないし、どんどん他のところにも広げてもらえばいいと思いますが、第三弾の後半のいわゆる「再仕分け」、これは質の悪いパフォーマンスにすぎません。仕分けの結果をどう反映させるかということは、行政刷新会議と各省庁の政務三役でやればいいだけのことで、一回仕分けたことについて、ふたたび役人をひっぱり出して「けしからん」とやるのは、性質(たち)の悪いパフォーマンスです。事業仕分けで、パフォーマンスはやってはいけない。逆に、本来の事業仕分けも否定されることになるからです。

 また特別会計の仕分けも、結論は「当たり前すぎる」ものが多い。これだけ準備してきて、もっと踏み込めなかったのかという気はします。例えば外為特会について、埋蔵金をどう組み入れるかルールを作りなさい、ということですが、どういうルールを作るかには踏み込んでいない。財投特会でも、「そもそも財投は必要なのか」という議論はありませんでした。

 税金を使って政策をやるわけですから、それが時代にあっているか、無駄はないか、ちゃんと機能しているかといったことをチェックしていくことは大事なことだと思いますが、民主党政権の事業仕分けの最大の欠点は、自民党政権がやったことを仕分けしているだけで、自分たちのやったことは仕分けの対象外だということです。今回、長妻さんの「年金記録の突合」をとりあげましたが、そもそも「突合」自体が合理的なのか、という議論はありません。やっていることはいいが、やり方を考えたらどうか、という議論です。

 自民党の事業仕分けチームでは、構想日本の協力を得て、仕分け人のみなさんとともに、民主党の二十二年度予算を仕分けしました。本当は決算を終えてから仕分けするので、詳細には「政策たな卸し」というのですが、結果は、子ども手当「廃止」、高速道路の無償化実験「廃止」、農家の戸別所得補償「廃止」でした。理由は簡単で、兆円単位の税金を投入するにもかかわらず、何をもってこの政策が成功したかという目標もない、期限もないからです。

 たとえば子ども手当であれば、当初計画では五兆円近い税金を投入するわけですから、出生率を何年後にどこまで上げるのかというような、何らかの計測可能な目標があってしかるべきです。にもかかわらず、そういうものが何もない。農家の戸別所得補償についても、例えば農業の国際競争力をどれだけ高めるか、あるいは国内の需給率にどれだけ貢献できるか、という議論も目標値もありません。高速道路の無償化実験についても、そもそも何をもってこの実証実験が成功したとみなし、次のフェーズにすすむのか、そういう議論がまったくない。こういう冷静な議論をすると、全部「廃止」ということになるわけです。

 民主党政権の事業仕分けに対して言いたいのは、事業仕分けをやるのは大いに結構ですが、対象を限定すべきではない、自民も民主もなく、政府の政策全部を事業仕分けにかけるべきだということです。自民党政権がやってきたものはすべて悪、民主党政権がやっているものはすべて善、ということではないはずです。来年も民主党政権が続いていて、事業仕分けを行うのであれば、二十二年度予算を聖域なく事業仕分けにかけるべきです。とりわけ問題になるのはマニフェスト関連ですね。それができるなら、民主党の事業仕分けを大いに評価しますが、民主党政権の政策は仕分けの対象外ということなら、単なるパフォーマンスにすぎないということです。

                                     つづく

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