【インターンによる発信『若い声』】私の「新しい資本主義」① ~DS経営とは?~

2023年9月14日 15:57 | 若い声


 一寸先は闇。これは大学に入った時に漠然と感じた将来への不安であった。

これからの日本に経済的成長は見込めず、賃金は停滞を続け、人口は減少の一途を辿る。そして軍事的な不安まで増し始めた。たとえ世間的に良いと言われる大学に入っても、この先に明るい未来など待ってはいない。日本はもはや日が昇る国ではなく、日が沈んでいく、文字通りの斜陽国家。社会全体が薄暗い雲に覆われているような感じがした。


 そんな鬱々とした気持ちで過ごしていた大学生活であったが、ある時こんな言葉に出会った。それは岸田総理がテレビで語っていた「新しい資本主義」。何が新しくて、何が変わるのか。疑問は絶えなかったが、何となく、興味をひかれた。学内に「新しい資本主義」政策で重視するという分配政策を研究対象の1つとしていた教授がいたこともあり、私はその教授の下で、分配政策案の1つと言える、「付加価値適正分配経営:DS(Distribution Statement )経営」を研究することにした。


 このDS経営の中心となる考え方の1つは、「反利益第一主義」である。

DS経営において、企業が生み出しているのは、従業員、役員、政府など複数の利害関係者に帰属する付加価値とされるが、「反利益第一主義」の「利益」とは、この付加価値のうち「株主に帰属する価値」を指す。よって、単に「利益」を上げようと経営すると、従業員の賃金や研究開発は「コスト」と見なされてしまう。実際にバブル崩壊後の「失われた30年」を見てみると、役員・従業員の給与、設備投資などが抑え込まれているのにも関わらず、株主への還元だけが急速に伸びており※下図参照、「人」や設備投資を「コスト」と位置づけ、株主、つまり「利益」を重視してきた日本社会の様相が伺える。


株式・証券制度の逆機能の20年


付加価値


 日本のように経済が成熟し停滞している状況にあっては、株主という特定の存在だけを優遇するのは得策ではない。いくら優遇しようが、企業に還元されにくく、人や設備投資はコストとして削減の対象となり、企業の長期的経営を阻害さえする。何より、売上が伸びない状況で「利益」を追求しても、利害関係者同士での付加価値を巡ったゼロサムゲームが起きるだけで、成長の余地なんてあるわけがない。それはこの「失われた30年」における株主(投資家)→企業、企業→株主(投資家)の資金の流れを見れば明らかである。


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 だからこそ経済活動において生まれる付加価値を「利益」だけに限定せず、従業員、役員にも分配できるように企業の経営、会計方式をフレーミングし直す。これが付加価値適正分配経営:DS経営である。


 このDS経営の下では、株主への配当予定額を一定レベル(当期純利益)となるよう経営計画を立て、それを超える付加価値が生まれれば、関係者(役員、従業員、事業)に適正配分する。関係者に強い動機付けが与えられることで、企業は持続可能な発展を促されるとともに、株主にも中長期的なメリットが生まれる。また、従業員持株制度を活用することで、株主は企業外の投資家だけではなく社内の従業員も含まれることになる。従業員は自身の働きがそのまま株価の向上(即ち給与の向上)に繋がり、投資家は中長期的に安定した配当を受け取ることが出来るようなる。このように社内関係者(従業員、役員)と株主というのは決して対立するものではないのである。

(インターン H・T)

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